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言の葉つづり

口福(幸福)いっぱい

皆さんは「こうふく」という言葉を、漢字でどう書きますか。
私は「幸福」ではなく、「口福」と書きます。
おいしいものを食べる幸せも「口福」。口元に笑顔が絶えない日々も「口福」
だけど、私が一番大事にしている口福は、心が温まる言葉で会話する「口福」なのです。
言葉からくる幸せを感じる事は、皆さんもたくさんありますよね。
きれいな言葉、思いやりのある言葉、心からの言葉、勇気あふれる言葉、知恵ある言葉、行動をともなう言葉・・・
今回は、そんなたくさんの言葉の中で、自分が言っても、他の人から言われても、一番心が温かくなる言葉についてのお話。そう。「ありがとう」についてです。

Aさんは、とても社会的地位のあるお金持ちの男性でしたが、少し手と足が不自由で、杖をついて来られました。その所為か、どこか暗い表情をされていました。
私は努めて明るく伺いました。「今日は、どんなご相談ですか?」
するとAさんは、力のない言葉で「これからの僕の人生をみてください」と、言われました。

「その足はお病気でなられたのですか」
「はい。一年前に頭の病気になりました。」
「そうですか」

私は普段どおりに、Aさんの生年月日を聞き、鑑定をしました。いろいろな事がわかったので、私はついAさんを、先生と呼んでしまいました。
「先生は、本当に頭の良い方ですね。正義感も強く、自分の信じる道をまっすぐに歩いていく、そんなお方ですね。そして、これまでの人生、全部順調にこられました。お金も地位も手に入れられ、何も不安も不自由もない。そんな勢いで、ここまで来られたのではありませんか。」
「はい、そう思います。」
「ところで、先生は、普段から先生のまわりに居られる人たちに声を掛けられたことがありますか。例えば、郵便配達員さん、警備員さん、コンビニや食堂の店員さんに、『ご苦労さま』とか。」
Aさんは黙って首を横に振られました。私は、話を続けました。
「そうですよね。先生は、ご自分の信じた道をひたすら、まっすぐ行くのが、得意な方ですもの。だから、まわりに居られる人たちを思いやる気持ちを、少しお忘れだったのではないですか。」
その時、Aさんはうつむき加減の顔をあげて、はじめて私の方を見てくれました。
「先生は、ピラミッドの頂点に居られるような方です。私から見ると、はるか上の方に居られます。でもね、考えてみて下さい。ピラミッドは土台がしっかりしているから、上まで石が積み上げられていますよね。先生がその頂点に居られるということは、先生を支える土台になっている人たちが、たくさん居られるということです。先生は、病気になってはじめて、自分を支えてくれる人たちの優しさに気づかれたのではありませんか。そして、これまで、そういった人たちに無関心だったご自身を悔やまれたのではありませんか。」
Aさんは、黙ったまま涙をながされ、しばらくして言われました。
「おっしゃるとおりです。僕、わかっていました。病気なってはじめて、自分のどこがいけなかったのか。それを自分で認めたくなかった!認めるのが、惨めで嫌でした。でも、先生に言われて、本当にその通りだと思います。」
「私の方こそ、少し生意気を言いました。」
Aさんは、ひとしきり涙を流されてから、言いました。
「先生、ありがとう!本当にありがとう。これからは、生まれかわったつもりで、まわりの人たちを大切に生きていきます。ありがとうございました。」

この時のAさんの”ありがとう”は本当に心にしみる”ありがとう”でした。
そして、人は生まれ変わることができると、Aさんに会って、確信しました。
病気もその為だったのでしょう。

いつも暗い顔で仕事以外無口だったAさんが、それから急に明るく話し上手になられたそうです。まわりの皆さんが私に「いったいどういう魔法をAさんに掛けられたのですか?」と言われました。

皆さん・・・
「ありがとう」を、漢字で書いてみてください。
「ありがとう」は、「有難う」。そう、「難が有る」と書きます。
「難が有って、ありがとう」
だから一番難しくて、一番心温かく、一番うれしくなる言葉なのです。
そして、「ありがとう」を、心をこめて伝えてみてください。
きっとそれだけで、あなたもまわりの人も幸せな気持ちになれる。
だから、口福(幸福)なのです。


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